構造的公準
企業会計の構造的な枠組みを示す構造的公準には以下のものがあります。
- 企業実態の公準
- 継続企業の公準
- 貨幣的評価の公準
企業実体の公準
企業実体の公準とは、企業をその所有者たる株主とは別個の独立した存在ととらえ、その企業に関する取引だけを企業会計における記録・計算の対象とするという前提です。
この企業実体の公準の存在により、企業をその所有者の手から分離することができ、個人企業における家計と企業会計の分離が可能とします。
企業会計はその組織のいかんにかかわらず、あくまでも企業それ自体をひとつの会計単位とします。そのため資産は企業それ自体の財産であり、かかる財産に対する債権者の企業に対する請求権が企業の負債であると仮定されます。そして資産と負債の差額が企業の財産に対する資本主(株主)の請求権であると理解されます。
したがって企業会計においては、常に資産の合計金額は持分としての負債と資本の合計金額に等しいという計算思考が確率することになります。このように企業それ自体を会計単位として確立することは、企業に投下された資本を計算的に出資者の家計から完全に分離することを可能にします。
継続企業の公準
継続企業の公準とは、企業が解散や倒産などの自体を予定することなく、事業を継続的に半永久的(恒久的)に行っていくとする前提です。
この公準により、恒久的に営まれるとされる存続期間を人為的に区切り、その人為的に区切られた一定期間ごとに利害関係者に対して会計情報を報告する期間損益計算という概念が必然的に導き出されることとなります。
期間損益計算と清算価値の計算
今日の企業会計は、かかる継続企業について一定の会計期間ごとにその計算結果を明らかにしますが(期間損益計算)、その計算は企業の清算を前提としたものとは根本的に異なります。
企業が成功したか、あるいは不成功に終わったかは、本来企業が清算されてはじめて完全に理解できます。この意味で期間損益計算は中間的な仮の計算でしかないともいえます。
しかしながら今日の企業において、その成立から閉鎖までの全期間を計算期間とすることは現実的ではありません。むしろ、無限に営業を続けると仮定された継続企業を前提にする限り、期間損益計算は仮の計算ではなく、むしろ基本的計算方法として理解できます。
貨幣的評価の公準
貨幣的評価の公準とは、会計行為たる記録・測定・伝達の全てが貨幣数値という測定尺度を用いて行われるという前提です。今日のような、複雑かつ多面的な企業の経済活動は、貨幣額によって表現することではじめて統一的に把握することが可能となります。
この公準により、今日の財務会計において物量情報だけが記載された会計帳簿や財務諸表が存在しないこと、逆に貨幣数値として把握することのできない経済活動や企業財産は会計計算の対象とはなりえないこととなります。
参考:会計公準の分類
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