貸借対照表原則一D、繰延資産の計上
将来の期間に影響する特定の費用は、次期以降の期間に配分して処理するため、経過的に貸借対照表の資産の部に記載することができる。
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企業会計原則の取り扱い
会計学上、費用は発生の事実に基づいて計上(発生主義の原則)するのが大原則となりますが、費用のなかにはその支出の効果が当期だけでなく、将来にわたって発現するものがあります。
そこで企業会計原則は、費用については発生主義により計上することを原則としつつも、「将来の期間に影響する特定の費用」については、貸借対照表の資産の部に計上することを認めています。
これを繰延資産といいます。
なお現実の会計実務においては繰延資産は財産価値が全くないことからこれを計上することを嫌う傾向があり、繰延資産を資産計上する会社はほとんどありません。
銀行に融資を申し込む際などには必ず過去数年間の決算書を提出しますが、繰延資産がもし貸借対照表に計上されていたとしても総資産からマイナスされ、なかったものとされます。(実態修正)
しかしながら、期間損益計算の適正化という観点からは、会計理論上重要な概念のひとつとなっています。
将来の期間に影響する特定の費用
将来の期間に影響する特定の費用とは、企業が創立するまでに要したコスト(創立費)や、株式発行に要したコスト(新株発行費)などのように、その支出の効果が当期だけのものでなく、将来にわたって長期的に発現すると見込まれる費用のことをいいます。
将来の期間に影響する特定の費用は、本来は純然たる費用として損益計算書に計上されるべき項目ですが、その効果が将来にわたって長期的に発現するため、その効果の発現する将来期間にわたって配分して費用計上したほうが、収益との対応関係を重視した適切な損益計算を行うことができることから、期間損益計算の適正化を重視する企業会計原則は、これをいったん資産として貸借対照表に計上し、効果の発現する期間に応じて長期的に費用を配分することを認めています。(費用配分の原則)
なお、資産の本質を換金価値や支払能力ととらえた場合、売却して換金するができず、また、借入金の返済資産として利用することもできない繰延資産には資産価値ゼロとなります。
したがって前述のとおり、銀行では融資先企業の貸借対照表を読む際、繰延資産の金額を総資産からマイナスしてなかったものとします。
しかし資産の本質を用役潜在力ととらえると、当期または当期以前の費用的支出うち、その効果が次期以後の将来期間にわたった発現することが期待される繰延資産には用益潜在力があり資産性があるといえます。
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