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財務諸表は法律用語。財務三表は単なる造語にすぎない



財務諸表とは本来法律用語

財務諸表(読み方:ざいむしょひょう)とは、本来は法律用語です。 昭和38年に公布された「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」という法律において「財務諸表」という言葉が初めて使われたのが「財務諸表」の始まりです。

財務諸表とは四つの表(4表)のことをいう

そして「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第1条においてに「財務諸表」ついて次のように定義されています。内容は少し省略しております。

金融商品取引法の規定により提出される財務計算に関する書類(以下「財務書類」という。)のうち、次の各号に掲げるものの用語、様式及び作成方法は、当該各号に定める規定の定めるところによるものとし、この規則において定めのない事項については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとする。
一 財務諸表貸借対照表損益計算書株主資本等変動計算書及びキャッシュ・フロー計算書並びに附属明細表(これらの財務書類に相当するものであつて、指定法人の作成するもの及び第二条の二に規定する特定信託財産について作成するものを含む。以下同じ。)

すなわち、「財務諸表」とは次の4つ並びに附属明細表を指すことになります。

「並びに」は並列を意味する

なお、ここで気づいた方がいらっしゃったかもしれませんが、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の第1条をよく読むと、財務諸表とは上記4つ並びに附属明細表と規定されています。

そして「並びに」とは、並列を意味する言葉であるため、この規定の文理解釈として財務諸表とは、上記4つに附属明細表を含めた5つとすべきとなります。

附属明細表は4表を補完するもの

しかし、附属明細表とは、あくまで貸借対照表などに書かれている情報について補足するものに過ぎず、それ自体単独に意味を持つものではありません。したがって当サイトの解釈としましては附属明細表は財務諸表(決算書)には含めません。 したがって財務諸表とは、上記の4表ということで解説しております。

また、経理実務上においてはこの当サイトの解釈が通説になっているものと思われます。

附属明細表、個別注記表も財務諸表に含まれる

ただし、この規定をより厳密に文理解釈しますと、実はさらに個別注記表など「財務諸表」に含まれます。

根拠としては、上でご紹介した「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」第1条のカッコ書き部分で、これらの財務書類に相当するものであつて、指定法人の作成するもの及び第二条の二に規定する特定信託財産について作成するものを含む。と記載されているからです。

しかし、財務諸表の範囲には含まれるものの、上で解説したとおり、附属明細表や個別注記表などについては、それ自体に単独の意味があるのではなくあくまでも貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、株主資本等変動計算書などについて補足的な情報補足的に公開しているだけなので、あくまで補助的な位置づけとなります。

「Financial statements」をそのまま日本語に直訳

ちなみにどうでもいいことですが、この「財務諸表」という名称はおそらくですが、英語の「Financial statements」そのまま日本語に直訳したものだと思われます。

財務諸表の範囲には諸説ある(結論)

以上より、財務諸表とは、貸借対照表損益計算書キャッシュフロー計算書株主資本等変動計算書という4つを指す、と当ブログではご紹介しています。 ただし、人によっては附属明細書や個別注記表なども財務諸表の範囲に含めるべきだ等々、色々と考え方があると思います。

厳密な意味においては附属明細表なども財務諸表の範囲に含まれますし、そもそも準拠するディスクロージャー制度によって財務諸表として公開が義務付けられている範囲は異なりますし、財務諸表の範囲に関しては諸説あると思ってください。これが結論です。

なお、最初にご紹介した「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」という法律において「財務諸表」について法律上定義が定められているとはいっても、法律というものはその法律が実際に適用される場面以外では法律に従わなければいけないといった義務はありません。すなわち、金融商品取引法の規制を受ける場合以外です。 これら諸々の事情を考慮した上で、財務諸表として格段に重要なの表が次の4つだということです。

財務諸表と決算書は同義の会計用語

また、日本において財務諸表という単語は決算書と同義の会計用語として扱われています。 ちなみに決算書とはざっくり説明すると会社が決算期ごとに作成する経理に関する報告書のことです。財務諸表もざっくり説明すると同じです。

財務諸表と決算書は厳密には別のもの

ただし、財務諸表と決算書は厳密には少し異なると考えている人が多いはずです。 理由としては、本来、決算書とは会社法の規定により作成される計算書類のことを指し、同様に財務諸表とは、金融商品取引法の規定に作成される外部公表される有価証券報告書などのうちの貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書部分を指すためです。

決算報告書が決算書になった

なお、これは個人的な主観に過ぎずどこかにソースがあるわけではないですが、決算報告書を短縮したのが決算書だと思います。ちなみに決算報告書とは、会社法の規定により作成される計算書類を紙にプリントした際に表示されるタイトルです。こういうものです。

財務三表とは

最後に、日本においては財務諸表のうち、貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書の3表を財務三表と呼ぶ謎の風潮があります。

ちなみにこれはもともととある有名な書籍の著者である経営コンサルさんが書いたことで広まった造語です。

したがって、 専門用語でも会計用語でもないため、会計の専門家や経理の専門家でこれを使う人は皆無ですが、素人さんに財務諸表について説明する際には大変都合がいいので好まれて使われている気がします。 あとは、財務諸表という用語の意義に関するめんどくさい話について深掘りして今回まとめてみましたが、財務諸表という用語の意味・範囲については色々ありすぎて人によって解釈も違いますし、不便な場面が多いので財務三表と言っておいたほうが都合がいいという側面もありそうです。

貸借対照表と損益計算書はつながってない!

しかし、貸借対照表と損益計算書はあくまでも株主資本等変動計算書を介して繋がっているのであり、現行制度会計における貸借対照表と損益計算書は実はつながっていません。繰り返しますと、財務三表という造語の解説において、貸借対照表と損益計算書は当期純利益を通じて繋がっていると誤解を与えるような解説がなされていますがこれは大きな間違いです。 平成17年6月29日に成立、同年7月26日に公布された会社法が施行された平成18年5月1日より前であれば、実は貸借対照表と損益計算書は当期未処分利益をいう項目を通じてつながっていました。したがって、過去の感覚を引きずっている古い方は貸借対照表と損益計算書は当期純利益を通じて繋がっていると勘違いしてしまうのかもしれないと、ちょっとあぶないなと感じました。


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計算書類と財務諸表

財務諸表の法律上の正確な定義は計算書類(会社法上の名称)、または財務諸表(金融商品取引法上の名称)となっています。

しかし、この二つをあえて区別する必要がある場合以外はまとめて「財務諸表」又は「決算書」と呼ぶのが一般的です。


会社法の計算書類に関する根拠規定

会社法における計算書類作成に関する根拠規定は次のとおりです。(一部省略)

会社法 第四百三十五条  株式会社は、法務省令で定めるところにより、各事業年度に係る計算書類(貸借対照表、損益計算書その他株式会社の財産及び損益の状況を示すために必要かつ適当なものとして法務省令で定めるものをいう。以下この章において同じ。)及び事業報告並びにこれらの附属明細書を作成しなければならない。


すなわち、株式会社は会社法の規定に基づいて、毎決算期ごとに計算書類、事業報告、並びにこれらの付属明細書を作成し、定時株主総会に提出しなければいけないこととなっています。その上で計算書類は会社計算規則にしたがって作成されることとなっています。


金融商品取引法における財務諸表に関する根拠規定

金商法における財務諸表の開示に関する根拠規定は次のとおりです。(一部省略)

金融商品取引法 第二十四条  有価証券の発行者である会社は、その会社が発行者である有価証券が金融商品取引所に上場されている有価証券に該当する場合等には、内閣府令で定めるところにより、事業年度ごとに、「有価証券報告書」を、当該事業年度経過後三月以内に、内閣総理大臣に提出しなければならない。


すなわち、証券取引所に株式を公開している株式会社等は、金商法の規定に基づいて「有価証券報告書」を内閣総理大臣と証券取引所に提出し、開示することが義務付けられています。

なお、「有価証券報告書」に記載される事項には企業の概況、事業の状況、経理の状況等となっていますが、このうちの経理の状況を報告するものとして記載されるものが貸借対照表や損益計算書などの財務諸表となっています。

さらに財務諸表はいわゆる財務諸表等規則に則って作成されることとなってます。


個別財務諸表と連結財務諸表

財務諸表(決算書)は個別の企業を対象とするのかそれとも支配従属関係にある企業グループ全体をその対象とするかにより「個別財務諸表」と「連結財務諸表」とに分けられます。

個別財務諸表とは文字通り個別の企業ごとに作成されるものですが、それに対する連結財務諸表とは、企業の法的形式ではなく経済的実態を重視し、支配従属関係のある企業グループを単一の組織体ととらえて作成される財務諸表です。


四半期財務諸表とは

財務諸表(決算書)は、全ての企業において、毎年ないしは半年ごとに必ず作成されます。

しかし、資本金5億円以上または負債総額200億円以上の大会社や、株式を市場公開している金融商品取引法の適用を受ける会社の場合は、一年に一回だけでなく、四半期ごとに財務諸表を作成することが法律により義務付けられています。

その場合の四半期ごとに作成する財務諸表を「四半期財務諸表」、または「四半期決算書」と呼びます。

ちなみに、四半期報告書とは、金融商品取引法の規定により義務付けられている開示資料一式であり、四半期財務諸表はその四半期報告書を構成する一開示資料という関係があります。(詳細はこちら。)





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