期間損益計算と経理思想
複式簿記原理における財産法と損益法とは区別された、損益計算原理としての財産法と損益法は、それらが適正な期間損益計算を行いうるためにそれぞれ静態論と動態論という経理思想との結びつきを必要とします。
財産法と静態論
財産法とは、期首時点の貸借対照表と期末時点の貸借対照表の純財産額を比較し、その把握された純財産額の増減額を期間損益としては把握する期間損益計算の方法です。
そのため、貸借対照表の資産の部に財産価値のない資産を計上したり、負債の部に債務とはいえないようなものまで計上してしまうと、資産と負債の差額である純財産があやふやなものとなってしまい、結果として算定される期間損益があやふやなものとなってしまいます。
したがって、財産法原理による期間損益計算を確実なものとするためには、貸借対照表の資産の部には財産価値のある財産だけを、負債の部には法的に確定している債務だけを計上し、貸借対照表がある一定時点における企業の適性な財産状態を表示する表である必要があります。
そのため財産法は経理思想としての静態論と結びつき、貸借対照表の機能を財産状態表示に求めます。
損益法と動態論
損益法とは、収益から費用を差し引いて期間損益を計算する期間損益計算の方法です。
なおその収益と費用とは、ある収入または支出を企業の永遠に継続すると仮定された会計期間のうちのある会計年度に合理的に割り当てられたものにすぎずきわめて期間的な概念です。
そのため、損益法原理による期間損益計算を確実なものとするためには、ある収入または支出がある会計年度に一度だけ確実に計上され、別の会計年度にも二重に計上されることがないようにしなければなりません。
そこですでに支出したが未だ費用としては認識されていない「支出未費用項目」、すでに収益として認識しているが収入はまだない「収益未収入項目」といった収支計算と損益計算との期間的なズレ「未解消項目」を貸借対照表に収容し、次の会計期間に確実に引き継いでいかなければなりません。
そこで損益法は経理思想としての動態論と結びつき、貸借対照表の機能を未解消項目の収容の場とします。
ちなみに動態論とは、会計の目的を一定期間における収益力表示におき、貸借対照表の基本機能を損益計算の手段とする経理思想です。
期間損益計算の方法 |
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経理思想との結びつき |
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静態論 |
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